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東京都

【先生対談】 子供たちの絵に驚きの変化!
「とうきょう すくわくプログラム」を
実践してみて
分かったこと

対談の写真

「とうきょう すくわくプログラム」(以下すくわくプログラム)は、幼稚園や保育所などで、子供たちがすくすく育ち、好奇心や興味を持って、わくわくしながら遊び、学べるよう応援する取り組みです。東京都と東京大学大学院教育学研究科附属発達保育実践政策学センター(CEDEP)が連携して推進しています。

すくわくプログラムを実践している「社会福祉法人 不動福祉会 すみれ保育園」の和田薫先生と「江東区塩崎保育園」の富岡幸子先生に、すくわくプログラムを通して、子供や保育者自身にどのような変化があったのか、子供の好奇心・探究心を育むために大切にした3つのポイントについて聞きました。

子供たちや保育者自身にどんな変化があったのか

自分に自信がついた様子

ー すくわくプログラムを実践して、子供たちや保育者自身が変化したと感じる点はあったのでしょうか?

和田先生の写真和田先生

活動が始まる前に、たまたま大きなタケノコが手に入ったことがあって。みんなで触って、絵を描いてもらったんです。絵に苦手意識があるお子さんは、なかなか描き始めることができなかったり、隣の子と同じような絵になっちゃったりしていたんです。でも1年間、探究活動を続けた後に、自分たちが育てたダイコンの絵を描いてもらったら、もう本当に絵が変わっていて。観察力がすごいんですね。それと「どんな絵でもいいんだ」っていう、子供たちの自己肯定感がぐっと高まって自分に自信がついたように感じました。

富岡先生の写真富岡先生

子供たちは日常の中でさまざまなことに対して気付きが増えて、「なんでだろう?」という場面をよく目にするようになりました。私たち保育者自身も、何気ない言葉や表情から子供の心を知り、子供の世界を探究する活動ができました。この年になって、保育ってこんなに楽しかったんだ! って改めて気付いたんです。子供たちの発見や変化が、自分たちの喜びになるんですね。

タケノコの絵の写真

探究活動が始まる前のタケノコの絵。
左右の絵は別の子供が描いているが、表現が似ている/すみれ保育園

ダイコンの絵の写真

探究活動が始まった後のダイコンの絵。
一人ひとりの描き方に特徴がある/すみれ保育園

子供の好奇心・探究心を育むために
大切にした3つのポイント

ー テーマ決めはどのようにされたのでしょうか。

ポイント①テーマ決めは、子供の日々の声に注目

和田先生の写真和田先生

昨年度は5歳児クラスで「ぐるぐる」をテーマに探究活動に取り組みました。きっかけは、普段の保育の中で、子供たちがフラフープの回る様子に興味を持ったり、お散歩の中でぐるぐる走り回ったりするのが本当に楽しそうだったので...。園で育てているきゅうりなどの「つる」を子供たちと一緒に見て、「これも回っているじゃない」などと観察することから活動を始めていきました。

きゅうりのつる観察の写真

きゅうりのつるを観察。
「『つるは下から巻いていくんだね』と子供たちの気付きもありました」/すみれ保育園

富岡先生の写真富岡先生

うちは昨年度、4歳児クラスで、「色」をテーマに探究しました。子供たちにはお気に入りの色があるけれど、日によってその好きな色が変化することがあって。そこから素朴な興味が生まれたんです。「気持ちに色はあるのかな?」と。

 発光する深海魚に興味を持った子供たちの写真

発光する深海魚に興味を持った子供たち。
「すくわくの補助金を活用して、蛍光クレヨンや絵の具を購入しました」/塩崎保育園

富岡先生の写真富岡先生

探究していくうちに、「色」から「影」につながっていったこともありました。光と影だけのシンプルな環境で、子供たちは自分の動きからファンタジーの世界をつくっていって、「影の国」が生まれたんですよ。

和田先生の写真和田先生

すごく素敵ですね。そうそう、探究活動を通して子供たちの想像力や表現がどんどん広がっていきますよね。うちの園でも、巻いたワイヤーをOHP(光源を利用して、台の上に置いたものをスクリーンに拡大投影できる機器)に投影した時に「ぐるぐるの世界に入りたい」と言い出して...飛び込む真似をして夢中で遊んでいました。

「ぐるぐるの世界」を楽しむ子供たちの写真

ワイヤーをOHPに投影し、その影の中に体を入れるなどして
「ぐるぐるの世界」を楽しむ子供たち/すみれ保育園

富岡先生の写真富岡先生

子供たちが自分の世界を表現し始めた時、そこに寄り添うってどういうことか、改めて考えました。正解なんてない。だからこそ面白いし、毎回新しい発見がありました。

和田先生の写真和田先生

ぐるぐる走り回るだけでも探究になるし、ぐるぐる絵を描きながら寝転んでいる姿も立派な表現なんですよね。例えば、おとなしい男の子が、思い切り表現し始めたことがありました。最終的には紙の上に寝転がって、足で自分を回転させながら描いていて(笑)。全身クレヨンだらけになりながら「見て、ぼくの足!」って誇らしげに見せてくれて。あの瞬間は、まさに"殻が破れた"って感じでした。

紙の上に寝転がって、自分を表現することに夢中な子供たちの写真

紙の上に寝転がって、自分を表現することに夢中な子供たち/すみれ保育園

ポイント②環境の設定はシンプルに

ー 探究活動を行う際、どんなことに注意して、環境を設定すればいいのでしょうか?

富岡先生の写真富岡先生

うちでは「素材との出合いはシンプルに、ドラマチックに」を意識しています。蛍光クレヨンや絵の具(前述の)を「今日はこれを使います」って出すのと、「今日ね、こんな素敵なものがあるんだよ。なんだと思う?」って丁寧に伝えて出すのとでは、全然引き込まれ方が違うんです。

和田先生の写真和田先生

なるほど!うちの園では、初めは素材をたくさん用意してしまったのですが、あれもこれもだと子供たちが集中できないことが分かり、環境設定は「シンプルに、少人数」を大切にしています。

富岡先生の写真富岡先生

分かります! それと、できるだけ本物の素材を使うようにもしています。本物に触れるってやっぱり大事なんですよね。絵を描く道具も、よくある合成繊維の筆じゃなくて、動物の毛の筆を用意したんです。「これ、何の動物の毛だと思う?」なんて会話から、素材の背景にも興味を持ってくれました。本物だと、子供たちの反応も全然違ってくるんです。

用意した画材の写真

本物の筆を用意して、絵の具の色も最低限に。
色を混ぜたりにおいを嗅いだり、自由に探究してくれました/塩崎保育園

ポイント③すぐに振り返ることが大事

探究活動後の振り返りや共有方法は?また、すくわくプログラムを実践する上での課題解決について教えてもらいました。

和田先生の写真和田先生

子供たちの様子をスマートフォンで写真や動画として撮影し、当日の午後や夕方に振り返りの時間を取り、参加した職員全員で気付きや疑問点を話し合いました。

保護者には、ドキュメントで伝えたり、保護者会で動画を流して共有したりしています。

富岡先生の写真富岡先生

うちもそうです。少人数で行われるので、次のグループが活動する前に振り返りをして、改善していきました。また、保護者には、活動の様子を写真付きでまとめた資料を掲示したり、すくわくプログラムの日を保育参観の日にしたりしました。

「振り返りシート」の写真

写真とともに子供たちの活動状況を「振り返りシート」に記載して、
次の探究活動につなげていく/すみれ保育園

富岡先生の写真富岡先生

活動の中では、走り回っただけで終わってしまった、なんてこともあり悩んだのですが、「こうなるだろう」と予想していたのは私たちだったと気付きました。子供たちのありのままを受け入れると、次はこうしようという瞬間があるんです。

和田先生の写真和田先生

私も探究活動の中で「問いを考える」時に、つい「こうなるんだろう」という想像をしてしまって、そんな邪念に悩んでいました。そんな時、違う視点から見ていた先生の言葉が、新たな気付きにつながることも多くて。

また、子供一人ひとりとしっかり向き合えるように、探究活動は少人数で行うようにしているのですが、4~5人の園児で探究活動を行っている時に、残りの園児は誰が見るのか?という課題も。体制確保については、園全体ですくわくプログラムを実践することで、解決できました。

すくわくプログラムとは?

「とうきょう すくわくプログラム」のロゴ画像

「とうきょう すくわくプログラム」は、幼稚園や保育所などで、子供たちがすくすく育ち、好奇心や興味を持って、わくわくしながら遊び、学べるよう応援する取り組みです。
東京都と東京大学大学院教育学研究科附属発達保育実践政策学センター(CEDEP)が連携して推進しています。

お話を聞いたのは...

和田薫先生の写真

和田薫先生

社会福祉法人 不動福祉会 すみれ保育園・保育士。
これまでに、0歳児クラスで「光」、5歳児クラスで「ぐるぐる」をテーマに探究活動を実践。子供たちの表現の豊かさと、自らの気づきを大切にしながら日々の保育に取り組んでいる。

富岡幸子先生の写真

富岡幸子先生

江東区塩崎保育園・副園長。
これまでに、4歳児クラスで「色」をテーマに探究活動を実践。子供たちの発想に寄り添いながら、創造性と自己肯定感を育む保育を実践中。